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はがき伝道 356号 非力

  • はがき伝道 2018年7月28日

    はがき伝道  平成30年6月356号 真福寺 

     

    「非力の菩薩、人を救わんとして溺れる」

     

     山口師の言葉が心に止まった。

    日大アメフット選手の悪質タックルが

    世間を騒がせている。

    米・北朝会談が実現するかしないかという今、

    この文章を書いている。

     

     山口師が70年代当時、

    禅の師匠に入門して間もなくのとき、

    師匠から諭された言葉が

    「非力の菩薩、

    人を救わんとして、溺れる」

    でした。

     山口師は世界平和は

    いかにしたら実現できるか

    教えてほしいと言うと、

    師は

    「まずお経を覚えろ」

    と言われたそうです。

    そこでまた同じことを師に

    「世界平和はいかにしたら…」

    と問うたそうです。

    すると、師は室内に山口師を呼び、

    上記の言葉を言ったそうです。

    つべこべ言わず、

    まず「お経を覚えろ」。

    寺の作務を専一に

    一生懸命することが大事と言ったのです。

     

     「目前心後」という

    世阿弥の言葉がある。

    眼前に起こることに

    心を囚われて

    自分の力を磨くことを忘れたら

    何もかも実現できない。

    心はいつも明鏡止水の心境で

    客観的に観察しないといけない。

    他人を客観的に見ることは出来ても、

    なかなか自分を客観的に

    見ることはできないものである。

     

     少し言葉を変えれば、

    社会批判は出来るが、

    自己の実力を磨いていく努力は

    出来ないものである。

    そのことを師は山口師に

    目前の禅寺における作法である

    「お経を覚え、作務に心を集中しなさい」

    と言ったのです。

    世間のことを気にするような時ではない。

    力を持たない自己の現実の

    今の非力な自分の姿を

    しっかり認識して、

    精進しなさいと諭されたのでした。

     

    70年代は安保、ベ平連、沖縄返還、

    成田空港反対、連合赤軍、安田講堂事件、

    三島由紀夫割腹事件、学生運動等々の

    真っ只中の時代に、

    山口師は禅の世界で生きる道を選んだのでした。